2026年8月31日、「社内報アワード2026」の審査結果が発表されました。
今年は253社から568企画が集まり、応募企画数は過去最多を記録。そのなかからゴールド賞、シルバー賞、ブロンズ賞などが選出されました。
そして今年、新たに設けられたのが「審査員特別賞」です。
選ばれたのは16社17企画。評価するのは、既存の審査基準だけでは測りきれない、企画に込められた熱量や、その会社ならではの挑戦です。
24年続いてきた社内報アワードに、なぜ今、新しい賞が生まれたのでしょうか。審査を担うコンクールプロジェクトに、その背景を聞きました。
毎年見直して来た審査基準
社内報は、本来、外部が一律にその良し悪しを評価できるものではありません。それぞれの会社が、自社のより良いコミュニケーションを願ってつくるもの。目的も、届ける相手も、組織の文化も異なります。
そんな「社内報」に、あえて共通の審査基準を設け、作品として評価できる仕組みをつくってきたのが、社内報アワードです。一つの応募企画に対し3人の審査員が審査することで、個人の主観だけに偏らない評価を目指しています。
審査を務めるのは、社内報やインターナルコミュニケーション、広報、コンテンツ制作などに専門性を持つ約50人の審査員。社内報アワード事務局では、長年のアワード運営を通して審査員とのネットワークを築くとともに、より公平で納得感のある審査を目指して、審査員の意見を取り入れて審査基準の改善も続けてきました。
2026年も審査開始の前に採点についての認識のすりあわせを行うなど、調整を重ねて審査に臨みました。

共通のものさしを持つことで、審査員による評価のばらつきを抑える。数多くの企画を審査するコンクールだからこそ、大切な取り組みです。
ところが、審査基準を整えていく一方で、別の課題も見えてきました。
基準をつくると、そこからこぼれるものがある
受賞企画は、3人の審査員による評価の平均点によって決まります。当然、上位に入るのは、複数の審査員から高く評価された企画になります。
一方、審査を続けていると、「ほかの2人には刺さらなかったけれど、自分にはものすごく刺さった」という企画も出てきます。
文章やデザインなどに改善の余地があり、総合点では上位に届かない。それでも、ある一人の審査員には強烈に伝わるものがある。
そもそも社内報は、企業によって目的も、文化も、社員も違います。
審査では共通の基準が必要である一方、「良い社内報」に一つの正解があるわけではありません。
その会社だからこそ成立する表現や、荒削りでも可能性を感じさせる挑戦を、既存の審査とは違うかたちで称えることはできないか。
そこから生まれたのが、「審査員特別賞」でした。
「私は、ここがいい」を言葉にする
審査員特別賞では、通常の審査とは異なる方法が取られました。
審査員が自分の担当企画のなかから「これは称えたい」と思ったものを推薦し、「なぜこの企画を選んだのか」を言葉にします。推薦は義務ではありません。
今年、推薦されたのは17の企画でした。
集まったコメントには、企画の可能性を評価するものや、自身のこれまでの経験に照らして「この取材をしたことに意味がある」と評価するもの、今後の挑戦を後押しするものなど、通常の講評とは少し違う言葉が並びました。
通常の審査では、応募企業が今後の改善につなげられるよう、良い点だけでなく改善すべき点も伝えます。一方、審査員特別賞で問われるのは、「あなたは、この企画の何に心を動かされたのか」ということ。 審査員自身の経験や価値観も含め、「私はここがいいと思った」と伝える。推薦コメントには、つくり手への激励ともいえる強いメッセージが表れていました。
手ブレも雑音もある。でも、このライブ感がいい
例えば、ある企業のWeb社内報では、イベントの現場で短い動画を次々と撮影し、リアルタイムに近い形で社内に発信し続けました。映像には手ブレもあり、周囲の雑音も入っています。
映像作品として見れば、もっと整える余地はあるでしょう。しかし、審査員が心を動かされたのは、その場にいるようなライブ感と、出来事が起きている瞬間を社員と共有しようとする姿勢でした。
また、ある企業の社内報は、洗練された誌面とは少し違うものの、会社が大切にしている価値観が誌面全体から強烈に伝わるものでした。
一般的な完成度だけでは測れない。けれど、「この会社には、このスタイルが合っている」
と評価することはできる。
その言葉を受け取った担当者が、「自分たちはこの方向で進んでいこう」と思えるなら、それもアワードが生み出せる価値の一つです。
「ここがいいんだよ」を話す時間
7月に行われた最終審査会では、審査員特別賞を推薦した審査員たちが、それぞれの「推しポイント」を紹介する時間も設けられました。

グランプリを決める審議では、「この企画は本当にグランプリにふさわしいのか」を議論します。
一方、審査員特別賞は、誰かと比較するのではなく、審査員が、「私は、この企画のここがいいと思った」とプレゼンテーションします。審査員たちはとても楽しそうに、それぞれが見つけた企画の魅力を語っていました。
審査基準に照らして評価し、改善すべきところは伝える。それと同時に、点数には表れない価値に気づいたときには、「ここがいい」と言葉にして返す。 それは、さまざまな社内報に向き合ってきた審査員だからこそできることなのかもしれません。
社内報に、正解はないから
社内報アワードはこれまで、より公平で納得感のある審査を目指し、審査基準を磨いてきました。だからこそ、その基準だけでは見えないものがあることも、以前から議論に上がっていました。
整っていること。
完成度が高いこと。
誰が見ても評価できること。
それだけが「良い社内報」ではありません。
その会社だからこそ生まれた表現。
まだ荒削りでも、これから何かが始まりそうな挑戦。
誰か一人の心に強く刺さった何か。
それらを見つけ、「ここがいい」と言葉にして返す。 社内報を「評価する」だけではなく、つくり手の挑戦を「称える」という、社内報アワードのもう一つの役割を形にしたい。その思いから、2026年、審査員特別賞が生まれました。